熱水噴出孔にある、生態系。
今回は楽園の終わりを告げるクラゲ、機械みたいな生態系
金属の骨格を身に纏う生物たちを見ていきましょう。
前編と動画はこちら。

『ふしぎ生態系』- 太陽の代わりに毒を喰らう!?
熱水噴出孔の周りでは地上とは違います。
という過酷すぎる環境で構成された世界。
たけのこどうして過酷な環境なのに、生きられるの?



生態系の基本である光合成の『太陽』がないのに
どうやって彼らは生活しているのでしょうか?



独自の生態系を築き、適応しているからです
その名も『化学合成生態系』
光合成と化学合成の違い – 光の代わりに毒を使う
まず、地上にいる生物は光合成によってエネルギーを得ています。
光合成
- 植物が太陽の光からエネルギーを吸収
- 植物が空気中の二酸化炭素を吸収
- 植物が水と太陽のエネルギーを利用して、二酸化炭素を酸素やでんぷんなどの有機物に変換
- 植物が空気中に酸素を放出、体内に有機物を生成
- でんぷんを含んだ植物を雑食動物や草食動物が食べ、肉食動物などに食べられて
その死骸や排泄物が植物の栄養に



太陽、植物、動物が
ぐるぐるエネルギー回してるんだね
熱水噴出孔の『化学合成』
簡単にいえば、熱水に含まれている化学物質を微生物が分解して
他の生物に栄養を分け与えます。
もっと詳しくいうなら、栄養たっぷりの熱水が海底から湧き上がる海底上や海底下
あるいは噴出孔付近の動物に生息する微生物が、水から硫化水素、酸素、二酸化炭素を吸収。
微生物が硫化水素を硫黄に変換することでエネルギーを生成。
生成されたエネルギーから二酸化炭素、メタン
あるいは環境中のその他の炭素源から栄養を生成。
微生物が硫黄、水などを放出。



つまり、微生物が化学物質を吸収して
エネルギーを分けっこするんだね



太陽の代わりに毒をたべちゃうの…?



しかし、その化学合成は
生命が太陽に依存せずに繁栄できる可能性です
多種多様な生物 – 終焉のクラゲ、毒の錬金術師など
熱水噴出孔の周りではたくさんの生物が住んでいます。
頂点捕食者であるタコは、熱水噴出孔周辺にのみ生息する種類もいます。
更にカニ、エビ、ムール貝。
実はムキムキな足をもっているのに、タコに捕食されてしまう二枚貝なども。
Dandelion Siphonophore – 終焉を告げるクラゲ


『Dandelion Siphonophore(以下、ダンデライオン)』という
ふわふわたんぽぽみたいな、ファンシーなクラゲの仲間も存在。
ダンデライオンが熱水噴出孔でみられると
熱水噴出孔付近の生物はほとんどが死滅していることを意味します。



この子たちは腐肉食で
海洋生物の亡骸を食べるから



熱水噴出孔の終わりを告げる最後の生き物
終焉のクラゲですねぇ
他にも、うなぎに似た魚であるゲンゲ科は
動きは鈍く無気力ですがあらゆるものを食べます。
中でも興味深い餌として、食べられるか不安になる生物
『チューブワーム』があります。



チューブワームを含めて、面白い生物を3名ご紹介ー!
チューブワーム – 実質、海底にひしめく小学生


和名はハオリムシといい、口・消化管すらありません。
体内に共生する微生物が、栄養をエネルギーに変換。



密集し、モノを食べずにエネルギーを作り出す姿は
海底の森林のよう
ジャイアントチューブワームという種だと、2年足らずで全長約1.5mにまで成長。



小学生くらいの虫が
海底にうじゃうじゃいると思うと…



ぷっ…
✞┏┛墓┗┓✞



チューブワームの部位を説明しましょうかね
プルーム、管にご注目!
○ プルーム
羽のような部分ことプルームは鮮やかな赤色。
なぜなら、人間の血液と同様
血液に酸素を運ぶタンパク質『ヘモグロビン』が含まれているから。
プルームの役割はろ過と栄養を体に運ぶこと。
海水から酸素、硫化水素、二酸化炭素をろ過。
そして、血液で化合物を空洞内のバクテリアへと運びます。
○ 管
この管はカビ・キノコにも含まれている
『キチン』という固い物質でできています。



カニやエビの外骨格と同じ素材だよ
捕食者・有毒物質から防御。
外骨格として、中身の虫を支える役割を持つ大事な部分。



ただし、一生管から外に出ることはできません



さらに管の中は細菌だらけ
細菌は化学合成によって糖を生成。
チューブワームは生成された糖の一部を吸収し、栄養として利用します。
ウロコフネタマガイ – 金属の骨格を身に纏う、毒の錬金術師


別名、スケーリーフット(鱗と足)。



この子は毒の錬金術師と
重装の騎士みたいな性質!



硫化鉄骨格を持つ、唯一の後生動物です
後生動物とはたくさんの細胞をもつ生物。
人間や鳩、チューブワームなど
ほとんどの生物が該当します。
硫化鉄骨格、つまりは金属の骨格を身に纏うウロコフネタマガイは
自然界でとても珍しい生き物!



鱗も黄鉄鉱などの金属で
構成されています
熱水から取り込んだ、硫化鉄から金属製の殻と鱗を生成。
住んでいる場所の熱水に、金属が豊富なら黒か金色。
少なめなら、白い鱗を生成。
現在、中央インド洋海嶺でのみ発見されており
本当に稀有な生物です。
微生物や菌 – 縁の下のちからもち!
微生物は、化学物質をエネルギーに変えるすごい生物。
彼らのおかげで、光が届かない有毒物質だらけの環境でも
独自の生態系が築かれました。
微生物は120℃くらいまで
つまり、沸騰したお湯(100℃)ですら生き残れます。



小さいのに、我慢強い子たちですね!
チューブワーム、ウロコフネタマガイ、エビなど
海底にすむ生物達と共存しています。



体内や体外に付着していますね…
微生物や菌は化学物質をエネルギーに変換することで
生物たちに恩恵を。
生物たちは微生物や菌に
住処や移動手段などを提供することで共存。
ウロコフネタマガイの食道に潜む微生物は
ウロコフネタマガイの害になる硫黄を
鱗から老廃物として放出。
そしてこの微生物や菌こそが、生態系の重要な存在。
さらに、過酷な環境で生命が生まれるという
確固たる証拠でもあります。
本日の『かんそうぶん。』



タンポポが腐肉を喰らう…
メルヘンですね



頭だいじょうぶ?



(おかしたべたい)


参考文献(敬称略)
- NOAA『How much of the ocean has been explored?』2025年6月10日アクセス
- NOAA『How does the temperature of ocean water vary?』2025年6月10日 アクセス
- NOAA『How far does light travel in the ocean?』2024年6月16日
- NOAA『What is bioluminescence?』2025年6月10日 アクセス
- NOAA『Chemosynthesis』2025年7月18日
- UC Berkeley News『Flamingos create water tornados to trap their prey』2025年5月12日
- PNAS『Methane-powered sea spiders: Diverse, epibiotic methanotrophs serve as a source of nutrition for deep-sea methane seep Sericosura』2025年4月17日
- 環境省『生物多様性国家戦略 2023-2030』2025年6月10日 アクセス
- 環境省『第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス』2025年6月10日 アクセス




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