狭い地上と広い海の比較。
太陽の届かない過酷な深海では、生態がどう変化するのか覗いてみましょう。
前編と動画はこちら。

『生物』- 4つの視点でくらべてみよう!

環境省の資料によると地上は
既知の生物だけで約 175 万種が知られています。
まだ知られて いないものも含めると、地球上には
300万種から1億1,100万種と様々な推定も。
一方、既知の海洋生物は約23万種以上。
深海生物は少なくとも2,500種類以上 もいます。
約5%の中でさえ、約23万種以上も見つかっているということは
まだ未知の海洋生物が存在している可能性が高いですね!
『呼吸方法』- 肺、エラ、皮膚で呼吸
地上生物の主な呼吸方法は、肺呼吸。
海洋生物の主な呼吸方法はエラ呼吸、もしくは皮膚呼吸です。
ノア陸は酸素が豊富で、肺呼吸に適しています



水中は『水中に溶けた酸素』を、エラで取り込む必要があります
エラ呼吸する主な海洋生物は魚類。
皮膚呼吸する主な海洋生物は、クラゲ、ウナギ などです。



夏に人に捕食されがちなウナギですが
実はエラ呼吸も皮膚呼吸もできます!!



おいしー!
『体の構造』- 骨格、色、視覚と光、〇〇に行くほど大きいサイズ
骨格
地上生物は重力に逆らう、たくましい骨格。
海洋生物は浮力に合わせた、柔らかい体を持っています。
浅い海中では浮力があるため、比較的重力対策が不要。
逆に深海では高圧に耐える構造が必要です。
色
地上では様々な色合いの動物が生息しています。
生息地で身を隠すためのカモフラージュする色。
求愛や威嚇のためのカラフルさなど。
浅い海の生物もカラフルな種が多くいますが
深海は黒や赤の生物が多いです。



それはなぜでしょう?



色が見えるために
必要な光が届かないからです
色を認識するには次の工程が必要。
- 光が物体に当たる
- 物体が、特定の波長の光を反射
- 反射された光が、生物の目に入る
- 脳が反射された光を、色として認識



物体が反射した光の波長を
目と脳がキャッチするんだね
ですが、深海に届くのは主に青色。
深海では、青い魚は体全体で青い光を反射するため
捕食者から非常に目立つというデメリットを持ちます。
赤い光は海の深部まで届かないため、実際には赤い深海生物は黒く見え、
捕食者や獲物から見えにくくなります。
なので光が届かずに、黒く見える赤色や
暗闇に紛れる黒の魚が多いです。
視覚と光
地上生物は目で色・形・動きを認識する種が多いですが
深海では光を感知する目が退化しているモノが多数です。



深海魚には
発光する器官や、暗所に強い目を持つ種が存在



適応してますねぇ
この深海魚には発光する器官を『バイオルミネセンス』といい
生物が化学反応によって、光を発生させる現象 をさします。
ルシフェリン、という発光する物質と
ルシフェラーゼ、という発光反応を触媒する酵素の
化学反応でピカピカするわけです。
地上でふわふわしている蛍も、バイオルミネセンスの仕組みで光ります。
サイズ
ベルクマンの法則、というものをご存じでしょうか?
同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、
近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する。
つまりは寒ければ寒いほど、生物は大きくなりやすいという現象。
地上の例で言えば、クマ。
温暖な地域では体が小さめのマレーグマ(体長1.0~1.5m、体重20〜70kg)
寒冷の地域では体がとんでもなくいかついヒグマ(体長1.5~2.0m、体重100〜400kg)
海でも似た現象が起きます。
深海では生物が巨大化しやすいという『深海巨大症』。



北に行って、深海に行っておおきくなーれ!
いっぱい食べられるからね!
無脊椎動物や、他の深海で生活する動物種が
浅いところに棲む近縁の動物よりも、大きくなる傾向があります。
例として生態も形も宇宙人みたいなイカですが
浅い海でいうと、ヒメイカ。体長は約2〜3cm程度。
深海ではダイオウイカ。体長(外套膜と腕の長さ)13m、触腕8.7mのサイズが発見。



そして、誠に残念ではありますが
ダイオウイカはおいしくないそうです…



アンモニア臭がひどいそうで



おしっこのにおい…
『生態系』- 太陽がなくても命は育つ!
主な生態系を、2種類ご紹介しましょう。
光合成生態系と化学合成生態系です。



かがく…むずかしそう



マァ、毒と言い換えればいいんじゃないですか?



生物、というより機械みたいな生態だね
光合成生態系
光合成 を基盤とした生態系。
地上では植物が光合成を行い、酸素や有機物を生成します。
そして光合成からうまれた、デンプンなどの有機物が
食物連鎖を通じて、人間含めた地上の動物のエネルギー源になります。
浅い海でも海藻や植物プランクトンが光合成を行い
酸素と有機物を生成。
こちらも食物連鎖を通じて、海の生物のエネルギー源になります。



太陽と植物 → 動物 → うんちを通して
また植物で循環!



たいようってすごーい!
化学合成生態系
メタンや硫化水素などから化学反応をおこす
微生物を基盤とした生態系 です。



深海など光が届かない場所では
光合成ができません
では何がエネルギー源となるのか?



なんと、硫化水素やメタンなどです
深海の海底から噴き出す熱水や冷水 には『硫化水素』や『メタン』などが
大量に含まれています。
その『硫化水素』や『メタン』から、微生物が有機物を生成します。



太陽の代わりに、かがくぶっしつ…
植物の代わりに、びせいぶつ…
そして、貝やエビが微生物が生み出した、有機物を食べて
他の海洋生物が捕食するという仕組みです。
この化学エネルギーから有機物を生み出す微生物は『化学合成微生物 』と呼びます。
こんな不思議な生態をした化学合成生態系が見られる場所は主に次の3つ
- クジラなど、大型な海洋哺乳類が骨になった付近 / Whale fall
- 海底の割れ目などから、マグマによって熱せられた海水が噴き出す、熱水噴出孔周辺 / Hydrothermal vent
- 硫化水素や、メタンなどの炭化水素に富んだ湧水が存在する、冷水湧出帯(れいすいゆうしゅつたい ) / Cold seep , cold vent
そのどれもが太陽光が届かない深海環境 です。



比較的、生命が湧きやすい場所ですね



命をなんだと思っていらっしゃる?
そしてこの『冷水湧出帯』ですが
熱水噴出孔の温度より低いというだけで
実際は冷たくない上に、周辺の海水よりもわずかに温かい場合が多いです。
『食事』- うんちと毒を食べるのは常識
地上では主に光合成生態系 に沿った食事が行われます。
植物が酸素や有機物を生み出し、草食動物が植物などを食べ
肉食動物が草食動物などを食べる、食物連鎖ですね。
浅い海でも、主に光合成生態系に沿った食事を行いますが
海ならではの少々フシギな食事方法をご紹介しましょう。
デトリタス食
デトリタスとはプランクトンなどの生物の死骸や排泄物などが
分解されて微粒子状になった有機物です。



排泄物…
つまり、うんち!!!!!!
あの幻想的な深海に降る雪、マリンスノーも生き物の死骸
死骸(マリンスノー)やうんちを食べるのもデトリタス食です。
ちなみにロマンチックな『マリンスノー』ですが
実は日本の方である、北海道大学の研究者さんが命名した表現なんです。
フィルターフィーダー
別名、濾過摂食。
その名の通り、水中にいるプランクトン類をエラや触手でろ過する食事方法です。
代表的な海洋生物はヒゲクジラ、ジンベエザメなど。
地上でいうと、フラミンゴもフィルターフィーダーです。
水中で竜巻を生み出して、小エビや小動物をろ過して捕食します。
化学合成エネルギー


この子は、ウミグモ。化学合成生態系の一部です。
このウミグモと微生物は共生関係にあります。
ウミグモは微生物を外骨格に宿して増やす。
微生物はメタンから有機物を生成して
ウミグモに栄養として取り込めるように
お互いに助け合って生きています。



つまり、動くおうち担当がウミグモ
ごはん係が微生物
水深の大移動
食事の為に夜と日中で水深を移動するトンデモ深海生物も存在。
深海の生物が上の層にいくと、大半は大ダメージを受けて変形しますが
『動物プランクトン』、『ハダカイワシ科の魚』などは水深を移動します。
昼は水深 約300m
夜は水深 約1,000m
そんな圧力が大変動する大移動をしてまで、食事を行うのです。
勿論、動物プランクトンやハダカイワシ科の魚は水深の層を移動しても
大丈夫なように適応していますから心配ご無用。
体が小さく柔軟、かつゆるやかな移動をしているから大丈夫、大丈夫。
ちなみに、日周によって
夜・日中で水深の層を移動する現象を『日周鉛直移動』と呼びます。



ヒトの子なら、移動する度に地獄みたいな負荷を受けるでしょうね



真似は厳禁です…
本日の『かんそうぶん。』



海に産まれなくてよかった
確実にお亡くなりになる…



地上ですらハードモードじゃないですか(笑)



ことばをえらべ
参考文献(敬称略)
- NOAA『How much of the ocean has been explored?』2025年6月10日アクセス
- NOAA『How does the temperature of ocean water vary?』2025年6月10日 アクセス
- NOAA『How far does light travel in the ocean?』2024年6月16日
- NOAA『What is bioluminescence?』2025年6月10日 アクセス
- NOAA『Chemosynthesis』2025年7月18日
- UC Berkeley News『Flamingos create water tornados to trap their prey』2025年5月12日
- PNAS『Methane-powered sea spiders: Diverse, epibiotic methanotrophs serve as a source of nutrition for deep-sea methane seep Sericosura』2025年4月17日
- 環境省『生物多様性国家戦略 2023-2030』2025年6月10日 アクセス
- 環境省『第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス』2025年6月10日 アクセス





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